揺れても、大丈夫。― 子どもと自分を信じるための6つのまなざし
- 2025/09/09
不登校の子どもを支える親の心は、日々揺れ動きます。 「信じたいけれど不安」「期待して落胆してしまう」「子どもの気持ちがわからない」…。 このシリーズでは、そんな親御さんの気持ちに寄り添いながら、6つのまなざしを紹介しました。
1. 信頼のまなざし
「この子なら大丈夫」と思う気持ちは、時に「こうなってほしい」という“期待”や、「前にできたから今回もできる」という“信用”にすり替わります。 期待や信用は、思い通りにいかなかったときに大きな落胆や苛立ちにつながりがちです。
信頼は、それとは違います。 「今は動けなくても、この子にはこの子の力がある」と、存在そのものを認めること。 条件や結果に左右されない深いまなざしです。 信頼のまなざしは、子どもに「このままでも大丈夫」という安心感を与え、再び歩み出す力の土台になります。
2. 揺れを受けとめるまなざし
不登校の子を前にすると、親の心は期待と落胆の間を揺れ動きます。 「今日は行けるかも」と子どもが言えば希望が膨らみ、結局行けなかったときには失望で心が沈む。
こうした揺れは、決して「弱さ」や「ダメなこと」ではありません。 むしろ、それだけ子どもに心を向け、一生懸命に関わっている証です。
揺れを否定せず、「また期待してしまったな」「落胆してしまったな」と受けとめる。 そのたびに「私はちゃんと向き合っている」と、自分をいたわることが、親の心を守り、子どもへのまなざしを優しくしていきます。
3. 「わからなさ」に耐えるまなざし
「子どもが何を考えているのか分からない」――不登校の子を支える親が、最もよく抱く不安です。 沈黙や不機嫌な態度に、つい問い詰めたり、無理に理解しようとしたりしてしまうこともあるでしょう。
でも、子どもの気持ちはまだ言葉になっていない段階かもしれません。 「わからない」ままで一緒にいることも、大切なかかわりです。
オープンダイアローグでも「不確実性に耐える」ことが原則とされています。 親子といえども人と人。完全に分かり合うことはできません。 それでも、「わからないけれど、ここにいるよ」という姿勢が、子どもの存在を尊重することにつながります。
4. 自分自身に向けるまなざし
不登校の子を支える中で、親は自分のことを置き去りにしがちです。 「お母さまがやりたいことは何ですか?」と尋ねても答えられない方や、「子どもが大変なのに自分のことなんて」と反発される方もいます。
けれども、親もまた一人の人間です。 疲れたら休む、気持ちを話す、小さな楽しみを持つ――そんなセルフケアは、わがままではなく子どもを支えるために必要なこと。
さらに大きな歩みとして、働きに出る、学び直す、習い事を始めることも選択肢です。 親が生き生きと過ごす姿は、子どもに安心と希望をもたらします。
5. 比べないまなざし
「他の子は元気に学校へ行っているのに」「昔のわが子はもっと頑張っていたのに」。 不登校の子を持つ親は、つい他の子や過去の姿と比べてしまいます。
しかし、比べることで苦しくなるのは親自身です。 「私の子育ては失敗だったのでは」と責めてしまい、子どもを見る目も厳しくなってしまいます。
子育てに「失敗」というものはありません。 その時々にできる最善を尽くしてきたのです。 また、「普通の人生」や「正しい成長のペース」も存在しません。
比べそうになったら、「今ここにいるわが子」に意識を戻すこと。 小さな変化に目を向けることが、子どもに「このままでいい」と感じさせ、安心できる居場所を作ります。
6. 一緒に育つまなざし
不登校の道のりで揺れるのは子どもだけではありません。 親もまた揺れ、悩み、学び、育っていきます。
「子どもを育てる」とは、親だけが働きかけることではなく、親子が共に成長する営みです。 子どもの存在(being)を見つめるまなざしは、最終的に「一緒に育つ」という視点へつながります。
その存在を支えるエネルギーの源は「愛」。 愛は言葉よりも、日々の態度や表情、行動の積み重ねとして子どもに伝わります。 そして親もまた「愛される存在」であることを忘れてはいけません。
まとめ
この6つのまなざしが共通して見てきたのは、子どもの「存在(being)」そのものです。 存在は比べられず、完全に理解することもできません。 それでも、親が「揺れても大丈夫」と心に置きながら子どもを見守るとき、子どももまた安心して生きる力を取り戻していきます。
親子は上下ではなく、共に揺れ、共に育ち合う存在。 それこそが、不登校の道のりを支える大切な視点なのです。
ご案内
もし今、不安や迷いをひとりで抱えているとしたら――、 安心して気持ちを言葉にできる場所があると、それだけで心が軽くなることがあります。
カウンセリングでは、親御さん自身の思いに丁寧に耳を傾けながら、 「揺れても大丈夫」と思える歩みを一緒に探していきます。

