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WISC-Ⅴ(ウィスク5)の主要指標である言語理解指標(VCI)から子どもの何が分かるのか?

  • 2024/09/02

WISC-V(ウィスク5)検査の言語理解指標(VCI:Verbal Comprehension Index)は、子どもの言語的な能力を評価する重要な指標です。

言語理解指標を通じて、子どもの言語の知識や理解力、概念形成能力、言語的な推論力などの側面について具体的な情報を得ることができます。

この指標のスコアは、特に言語の使用に関連する能力を反映し、学業や日常生活においてどのような困難や強みがあるのかを理解するのに役立ちます。

言語理解指標(VCI)の構成

WISC-V(ウィスク5)検査の言語理解指標は、主に以下の2つの下位検査で構成されています。

1. 類似(Similarities):

子どもに対して2つの単語(例えば、「犬」と「猫」)が提示され、それらの共通点や類似性を説明する能力を測定します。

このテストは、抽象的な概念を形成し、言語的に表現する能力を評価します。

2. 単語(Vocabulary):

子どもが与えられた単語の意味を説明する能力を測定します。

例えば、「リンゴ」という単語に対して、「果物の一種で、赤や緑の皮を持ち、甘くて食べられる」といった説明を期待します。

このテストは、語彙の知識と意味理解力を評価します。

言語理解指標(VCI)から分かること

1. 語彙力と言語的な知識の理解度

言語理解指標は、子どもの語彙力や言葉の知識の理解度を評価します。

スコアが高い子どもは、幅広い語彙を持ち、それを正確に使うことができると考えられます。

例えば、教室で新しい単語を学ぶとき、その子どもは新しい単語の意味をすぐに理解し、それを適切に使うことができます。

一方、スコアが低い子どもは、限られた語彙しか使えず、新しい語彙を学ぶのに時間がかかるかもしれません。

具体例として、ある子どもが「犬」と「猫」の違いを説明するタスクで「犬と猫は両方とも動物です」と答えた場合、抽象的な共通点を見つけ出す能力が高いと判断されます。

逆に、「犬はワンワン吠えますが、猫はニャーニャー鳴きます」といった具体的な説明しかできない場合、その子どもは抽象的な概念形成に課題があると考えられます。

2. 抽象的な推論力と概念形成能力

この指標は、子どもが抽象的な概念を形成し、推論する能力を評価します。スコアが高い場合、子どもは類似点を見つけたり、概念を一般化したりする能力が高いと考えられます。

例えば、子どもが「車」と「自転車」の共通点について問われたとき、「両方とも移動するための乗り物です」と答えるなら、その子どもは抽象的な推論力が優れていると見なされます。

逆に、「車はエンジンで動き、自転車はペダルで動く」と答える場合、具体的な事実は理解していても、抽象的な概念形成には難しさがあると判断されることがあります。

3. 社会的知識と状況理解のレベル

言語理解指標の「理解」テストでは、日常的な状況や社会的なルールの理解度を測定します。

スコアが高い場合、子どもは社会的な常識や社会のルール、倫理観をよく理解していると判断されます。

例えば、「なぜ人々は図書館では静かにしなければならないのか?」という質問に対して、「他の人が集中して読書をしたり、勉強をしたりするのを妨げないためです」と答えることができれば、その子どもは社会的な状況理解と適応力が高いことがわかります。

一方で、スコアが低い場合、社会的なルールや状況を理解するのに苦労することが示唆されます。

この場合、学校生活では他の子どもたちと同じルールに従うのが難しく、対人関係で誤解が生じやすい可能性があります。

言語理解指標のスコアが低い場合の具体的な課題と支援の例

1. 学校生活における課題授業の理解が難しい

言語理解指標が低い場合、子どもは授業で教師の話す内容を理解するのに苦労することがあります。

特に、言語を使った指導や説明が中心となる教科(国語、社会、理科など)で成績が低下しがちです。

例えば、教師が話す抽象的な概念(例えば、「自由」や「正義」など)を理解できない場合、学習内容を理解するのに大きな障害となります。

読解力の問題:

語彙の理解力が低いため、文章を読んでその内容を正確に理解することが困難です。

特に、複雑な文章や説明文を読む際に、意味を正確に把握できず、結果として学習意欲が低下する可能性があります。

2. 家庭生活における課題コミュニケーションの難しさ:

言語理解指標が低い子どもは、自分の考えや感情を言葉で表現するのが難しいため、家庭内でのコミュニケーションに課題を抱えることがあります。

例えば、「今日の学校で何があったの?」と聞かれたときに、「何もない」としか答えられない場合、家族との対話が深まらず、親子関係が疎遠になるリスクがあります。

社会的スキルの不足:

社会的な状況やルールの理解が不十分であるため、家庭外での行動に困難を感じることがあります。

たとえば、公共の場での振る舞い方を理解せず、不適切な行動を取ってしまうことがあるかもしれません。

言語理解指標の支援方法

1. 語彙力の強化:

家庭や学校での会話を通じて、新しい言葉を学ぶ機会を増やし、具体的な例を使って説明するようにします。

たとえば、毎日の読書や新しい単語を使ったゲームを取り入れることで、語彙を豊かにする支援を行います。

2. 具体例を用いた学習:

抽象的な概念を理解しにくい子どもには、具体的な例や実物を使って説明することで、理解を助けます。

例えば、「自由」という概念を説明する際に、「遊び時間に好きな遊びを選べること」を例として挙げると、子どもがより理解しやすくなります。

3. 社会的ルールの練習:

家庭で日常的に社会的なルールや状況について話し合う時間を設けることで、子どもがその意義を理解しやすくなります。

具体的な場面を想定して「どうすべきか」を話し合う活動を取り入れることが効果的です。

4. フィードバックとリフレクションの強化

言語的な能力を向上させるためには、定期的なフィードバックと自己反省の機会を提供することが重要です。

たとえば、授業中の発言や宿題の回答に対して、具体的なフィードバックを与え、それがどのように改善されるべきかについて話し合います

子どもが自身の考えを言葉で表現する機会を増やし、その表現についてのフィードバックを繰り返すことで、言語理解能力の向上を促すことができます。

5. アクティブリスニングのスキル向上

言語理解指標が低い子どもは、聞き手としてのスキルにも課題がある場合があります。

学校や家庭での対話を通じて、アクティブリスニング(積極的傾聴)の練習を行うことが効果的です。

これは、相手の話を注意深く聞き、それを要約して返すなどの活動を含みます。

たとえば、「今日は学校で何を学んだのかを教えて?」という質問に対して、子どもが答えた内容を親が繰り返し要約し、確認することで、聞く力と話す力を共に鍛えます。

6. リーディングプログラムの導入

言語理解力の強化のためには、リーディングプログラム(読み聞かせや読書プログラム)を導入することも有効です。

例えば、子どもに適した難易度の本を選び、毎日一定時間の読書時間を設けることで、語彙や文脈理解力を向上させることができます。

また、読んだ内容についてのディスカッションを行い、理解度を確認し、言語能力を高める助けとします。

7. ビジュアルサポートの活用:

言葉だけでは理解が難しい場合、視覚的なサポート(絵カード、図表、動画など)を使用することで理解を助けることができます。

特に抽象的な概念や複雑なプロセスを説明する際には、ビジュアルサポートが非常に効果的です。

これにより、視覚と聴覚の両方から情報を得ることができ、言語理解を深めることが可能になります。

8. グループディスカッションやプレゼンテーションの機会を増やす:

子どもが自分の意見を発表したり、他者と意見交換する機会を多く提供することも効果的です。

例えば、学校の授業でのグループディスカッションやプレゼンテーションを通じて、意見を整理し、論理的に言語化する練習を積むことができます。

これにより、言語的な表現力とともに、他者の意見を理解し、それに対して適切に反応するスキルも養うことができます。

WISC-Ⅴ(ウィスク5)検査の主要指標である言語理解指標(VCI)の重要性のまとめWISC-V(ウィスク5)検査における言語理解指標(VCI)は、子どもの言語的な知識、概念形成力、抽象的な推論能力、社会的な理解力を総合的に評価する重要な指標です。

この指標のスコアは、子どもの学業成績、社会的なスキル、コミュニケーション能力に直接影響を及ぼします。

スコアが低い場合、子どもは学校生活や家庭生活でさまざまな困難に直面することがありますが、適切な支援と介入を行うことで、これらの困難を克服し、言語能力の向上を図ることができます。

言語理解指標の結果を踏まえた具体的な支援策としては、語彙力の強化、具体例を用いた学習、フィードバックの提供、アクティブリスニングの練習、リーディングプログラムの導入、ビジュアルサポートの活用、そしてグループディスカッションやプレゼンテーションの機会を増やすことが挙げられます。

これらの方法を組み合わせることで、子どもの全体的な言語能力を高め、学校や家庭での生活をより豊かで充実したものにすることが可能です。

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