自分のことしか考えない「幼稚な父親」が増えた理由とは
- 2025/12/21
「幼稚な父親」が増えた社会的・心理的背景
近年、子育てや家庭より自分の趣味や快楽を優先する「未成熟な父親」の存在が指摘されています。この現象は、個人の資質の問題だけでなく、社会構造や価値観の変化が深く関わっています。
父親役割モデルの不在と世代間連鎖
現在30代〜40代の父親たちは、自分自身が「父親不在」の家庭で育った世代です。高度経済成長期以降、父親は仕事中心の生活を送り、家庭や子育てにほとんど関与しませんでした。そのため、彼らには「父親として何をすべきか」「どう子どもと関わるべきか」という具体的なモデルがありません。自分の父親から学ぶことができなかったため、父親役割を実際に演じようとしても、分からず戸惑います。結果として、父親としての責任を回避し、独身時代と変わらない生活を続けようとします。これは「学習していないことはできない」という当然の帰結でもあります。
「個人の自由」の過度な重視
現代社会では、「自分らしく生きる」「個人の幸福追求」が強調されます。これ自体は重要な価値観ですが、極端になると「自分の欲求を我慢することは悪」「自己犠牲は不健全」という認識につながります。結婚や子育てには、必然的に自分の時間や自由を制限し、他者(配偶者・子ども)のために行動することが求められます。しかし、「自分を犠牲にしたくない」という思いが強すぎると、家族の責任を「自己実現の妨げ」と捉え、回避しようとします。「家族のために我慢する」ことが美徳とされた時代から、「我慢は悪」とされる時代への転換が、父親の未成熟化を助長しています。
延長された青年期とアイデンティティの未確立
現代の若者は、経済的自立の遅れ、就職の不安定化、結婚年齢の上昇などにより、心理的な「大人」になる時期が遅れています。いわゆる「モラトリアムの延長」です。30代、40代になっても、内面的には「まだ自分は若い」「まだ遊びたい」という青年期的な心性を維持している男性が増えています。結婚し子どもができても、心理的には「大人になりきれていない」ため、父親としての責任を自覚できません。また、終身雇用の崩壊、キャリアの不安定化により、「仕事」を通じた男性アイデンティティの確立が困難になっています。従来の「仕事で家族を養う稼ぎ手」という父親役割が機能しなくなり、新しい父親像を確立できないまま、宙ぶらりんの状態に置かれています。
消費社会と即時的快楽の追求
現代は、娯楽、趣味、快楽が容易に手に入る消費社会です。ゲーム、SNS、動画配信、ギャンブル、アルコールなど、即座に満足を得られる手段が無数に存在します。子育ては、時間がかかり、努力が必要で、すぐに成果が見えず、しばしば不快やストレスを伴います。一方、ゲームやSNSは、即座に快楽や達成感を与えてくれます。脳科学的にも、即時的報酬に慣れた脳は、遅延報酬(将来的な満足)に対する耐性が低下します。子育てという長期的で地道な営みより、目の前の快楽を選択してしまうのは、ある意味で脳の適応反応とも言えます。
「イクメン」像の表層的理解
近年、「イクメン」(育児する男性)が称賛される風潮があります。しかし、一部の男性は、これを「たまに子どもと遊ぶだけで褒められる」「SNSに子どもとの写真を載せれば良い父親と思われる」と表層的に理解しています。実際の育児の大変さ(夜泣き対応、オムツ替え、病気の看病、日々の世話、学校行事への参加など)には関与せず、「楽しい部分だけ」を切り取って「育児している」と自己認識します。メディアやSNSでの「カッコいいパパ像」が、実際の泥臭い育児労働とかけ離れているため、現実とのギャップに直面すると逃避します。
夫婦関係の変容とパートナーシップの欠如
かつての日本の家族では、夫婦は「役割分担の協力者」であり、恋愛感情や精神的つながりは二の次でした。しかし現代では、「夫婦は恋愛関係の延長」であり、感情的つながりが重視されます。しかし、結婚や出産後、配偶者が「恋人」から「母親」「家事育児の担い手」へと役割が変化すると、男性は「自分への関心が薄れた」「恋愛感情が冷めた」と感じ、家庭への関与意欲を失います。「妻が自分を大切にしてくれないから、自分も家庭を大切にしない」という幼稚な報復心理が働くこともあります。
母親の過剰負担と父親の排除感
日本社会では、依然として「育児は母親の仕事」という規範が強く、母親が育児の大部分を担っています。母親が完璧主義で、父親の育児参加を「やり方が違う」「下手」と批判したり、自分の領域を侵されることを嫌ったりすると、父親は「自分は必要ない」「どうせ何をしても文句を言われる」と感じ、育児から距離を置きます。これは、母親側の問題でもあり、父親側の問題でもあります。適切なコミュニケーションとパートナーシップの構築が欠如しています。
職場環境と長時間労働
日本の職場は、依然として長時間労働が常態化しており、父親が物理的に家庭にいる時間が限られています。疲弊した状態で帰宅すれば、育児に関与する余力はありません。また、「育児休業を取る男性は出世できない」「早く帰る男性は評価が低い」という職場文化も根強く、制度があっても利用できない現実があります。「仕事を言い訳にして家庭責任を回避する」男性もいますが、一方で、本当に職場環境が父親の育児参加を阻んでいるケースもあります。
父親の孤立と相談相手の不在
母親には、ママ友、母親学級、育児サークルなど、育児について相談したり共感し合ったりする場がありますが、父親にはそのような場がほとんどありません。育児の悩みや不安を相談できず、孤立したまま、どうすればいいか分からず、結局何もしないという状態に陥ります。
精神的未成熟とパーソナリティの問題
一部のケースでは、父親自身が発達障害(特にADHD)、パーソナリティ障害(自己愛性、回避性など)、依存症(ゲーム、アルコール、ギャンブル)などの精神医学的問題を抱えている可能性があります。これらの問題により、衝動制御、共感性、責任感、計画性などに困難があり、父親役割を果たすことが極めて難しくなります。
まとめと提言
「幼稚な父親」の増加は、個人の問題というより、社会構造、文化、価値観の変化が生み出した現象です。解決には、以下が必要です。・ 父親教育の充実(父親学級、育児スキルの具体的指導)
・ 職場環境の改革(育児休業の取得促進、長時間労働の是正)
・ 父親同士のコミュニティ形成
・ 夫婦間のコミュニケーション支援
・ 男性の精神的健康への支援
・ 「父親とは何か」という新しいロールモデルの社会的共有
父親を責めるだけでなく、父親が成長できる環境と支援を社会全体で作ることが重要です。
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発達障害ラボ
車 重徳
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