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なぜ、最近の親は小学生の子どもの髪を染めるのか

  • 2025/12/20

子どもの髪を染める親の心理的背景

近年、小学生や未就学児の髪を派手な色に染める親が一部で見られるようになり、社会的な議論を呼んでいます。この現象の背景には、複数の心理的・社会的要因が存在します。

「子どもの自己決定権の尊重」の誤解

現代の育児では、「子どもの意思を尊重する」「自己肯定感を育てる」「やりたいことをさせる」という価値観が強調されています。これ自体は重要な視点ですが、一部の親はこれを極端に解釈し、「子どもの望むことは何でも叶えるべき」と考えます。子どもが「髪を染めたい」と言えば、それを拒否することが「子どもの意思を否定すること」「自己肯定感を傷つけること」だと誤解し、安易に応じてしまいます。しかし、真の自己決定権の尊重とは、子どもの発達段階に応じた適切な選択肢を与え、判断力を育てることです。幼い子どもには、まだ長期的な結果を予測する能力や、社会的文脈を理解する力がありません。「今やりたい」という欲求と、「それが本当に自分にとって良いことか」を判断する力は別物です。

親自身の承認欲求とSNS文化

SNS時代において、子どもは親の「作品」「自己表現の手段」となることがあります。派手な髪色の子どもの写真は、SNSで注目を集めやすく、「いいね」や称賛のコメントを得られます。「個性的な子育てをしている自分」「型にはまらない自由な親」というイメージを演出し、他者からの承認を得たいという親自身の欲求が、子どもの髪を染める行動の背景にあることがあります。子ども自身の幸福よりも、親が「注目されたい」「特別でありたい」という願望が優先されている可能性があります。

「普通」からの逃避と反抗

自分自身が厳格な家庭で育ったり、「普通であること」を強制された経験を持つ親は、その反動として、子どもには「自由」を与えたいと強く願うことがあります。「自分が子どもの頃にできなかったことを、子どもにはさせてあげたい」という補償的な心理が働き、社会規範や常識を無視した行動に至ります。これは、子ども本人のためというより、親自身の過去への反抗や癒しのための行動です。

境界線の欠如と共依存

健全な親子関係では、親と子どもの間に適切な心理的境界線が存在します。しかし、一部の親は子どもを自分の延長や所有物のように扱い、境界線が曖昧になっています。「子どもと友達のような関係でいたい」「子どもに嫌われたくない」という思いが強すぎると、親としての役割(保護者、教育者、規範を示す存在)を放棄し、子どもの要求に無条件に応じてしまいます。また、子どもを通じて自分のアイデンティティを確立しようとする依存的な関係性も、このような行動を引き起こします。

現実的リスクの認識不足

多くの親は、子どもの髪を染めることの具体的なリスクを十分に理解していません。

健康面のリスク

・ 子どもの頭皮は大人より薄く敏感で、ヘアカラー剤による化学的刺激で炎症、かぶれ、アレルギー反応を起こしやすい

・ 将来的にアレルギー体質になるリスク

・ 髪のダメージによる毛髪の健康問題

社会的リスク

・ 学校や保育園で問題視され、子どもが注意される、孤立する

・ 他の保護者から避けられる、批判される

・ 将来の就職活動や社会生活での不利益

心理的リスク

・ 過度な注目を集めることで、子どもが「外見で評価される」ことを学習する

・ 本来の自己より「見た目」が優先される価値観の形成

・ 親が自分を「展示物」として扱っているという感覚

これらのリスクを軽視するか、認識していても「うちの子は大丈夫」と根拠なく楽観視します。

「個性」と「逸脱」の混同

「個性的であること」は確かに価値がありますが、それは内面的な特質、才能、興味、価値観などから自然に育まれるものです。しかし、一部の親は、外見的な奇抜さを「個性」と混同しています。派手な髪色は、本人の内面から自然に生まれた表現ではなく、親の判断による外的な変化です。特に幼い子どもの場合、それが本当に本人の望みなのか、親の誘導や暗示によるものなのかは不明瞭です。真の個性は、子ども自身が成長する中で発見し、育てていくものであり、親が外見を通じて「作り出す」ものではありません。

育児の孤立と判断力の低下

現代の親は、孤立した環境で子育てをしています。相談相手がいない、客観的な意見を聞く機会がないため、自分の判断が適切かどうかを検証する機会がありません。SNSで同じような価値観を持つ人々とだけ繋がることで、「髪を染めることは問題ない」という認識が強化され、エコーチェンバー(同じ意見だけが反響する閉鎖空間)に陥ります。

商業主義の影響

子ども向けのファッション産業やSNSインフルエンサー文化が、「子どもでもオシャレであるべき」「可愛くあるべき」というメッセージを発信しています。子どもを「小さな大人」として扱い、大人と同じ美容行為を推奨する風潮が、一部の親の判断を歪めています。

愛情表現の誤り

「子どもの望みを何でも叶えてあげる」ことが愛情だと誤解している親もいます。しかし、真の愛情とは、時に子どもの望みを制限し、将来のために今は我慢させることも含みます。適切な境界と制限を設けることは、子どもに安全と安心を与え、社会で生きるための規範を学ばせる重要な役割です。

親自身の精神的問題

一部のケースでは、親自身が精神的な問題(衝動制御の困難、境界性パーソナリティの傾向、未解決のトラウマなど)を抱えており、それが子育てに影響している可能性もあります。

まとめと提言

子どもの髪を染める行動は、表面的には「自由な子育て」に見えても、実際には子どもの健康、社会適応、心理的発達にリスクをもたらす可能性があります。社会として必要なのは、親を批判することではなく、以下のような支援です。

・ 適切な子育て情報の提供と教育

・ 親のメンタルヘルス支援

・ 孤立した子育ての解消と相談体制の充実

・ 「子どもの権利」の正しい理解の促進

子どもは、親の所有物でも自己表現の道具でもなく、独立した人格を持つ存在です。その尊厳と健やかな成長を第一に考える社会的合意が必要です。

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発達障害ラボ

車 重徳

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自閉症スペクトラム(ASD)や広汎性発達障害(PDD)、学習障害(LD)やグレーゾーンの子の支援やトレーニングに定評のある発達障害ラボの室長です。 知能検査「WISC-Ⅴ(ウィスク5)」の実施や既存の結果による分析・アドバイスも行っています。 また、近年増えている起立性調節障害やHSC(敏感過ぎる子ども)の対応方法などにも定評があります。