発達障害を抱える子どもはなぜ、約束を守ることが苦手なのか
- 2025/12/17
発達障害を抱える子どもが約束を守ることが苦手なのは、主に脳の実行機能(executive function)の発達遅滞や特性によるものです。自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)などで共通に見られます。以下で主な理由を神経心理学的・行動的観点から解説します。
まず、最も重要なのが「実行機能」の障害です。実行機能とは、計画立案、優先順位付け、衝動抑制、作業記憶、柔軟な思考切り替えなどを司る前頭前野の機能群です。ADHDでは前頭前野のドーパミン・ノルアドレナリン系の活動が低下しやすく、計画を立ててもそれを維持・実行するのが困難です。例えば、「宿題を終わらせてからゲームする」という約束をしても、ゲームの誘惑に負けて衝動的に始めてしまいます。作業記憶(ワーキングメモリー)の弱さも影響し、「約束したこと」を頭に留めておけず、忘れてしまうことが頻発します。
ASDの子どもでは、認知の柔軟性(cognitive flexibility)の欠如が目立ちます。ルーチンやこだわりが強く、状況が変わると対応が難しいため、「今日は友達と約束したけど、体調が悪いからキャンセルする」といった柔軟な判断が苦手です。また、他者の視点を取る「心の理論」の弱さから、約束が相手に与える影響を十分に想像できず、「守らなくても大したことない」と軽視してしまうケースもあります。
時間概念の理解不足も大きな要因です。発達障害児は時間の経過を正確に把握しにくい(時間盲:time blindness)傾向があります。「5時に帰る」という約束をしても、夢中になると時間が過ぎていることに気づかず、遅刻を繰り返します。これは前頭前野と基底核の連携異常に関連すると考えられています。
さらに、報酬系の偏りがあります。ADHDでは即時的な報酬を強く求めるため、長期的な約束(後で褒められるなど)より、目の前の快楽を優先します。約束を守るメリットが実感しにくく、動機付けが弱いのです。
感覚処理や過集中も影響します。ASDでは特定の刺激に過集中し、周囲の約束を忘れることがあります。また、不安や感覚過敏で約束の場面自体がストレスになり、回避行動を取る場合もあります。
これらの特性は本人の「怠け」や「わがまま」ではなく、脳機能の違いです。叱責だけでは改善しにくく、むしろ自己肯定感を低下させます。対応として、視覚的なリマインダー(タイマー、チェックリスト)、約束を小さく具体的に区切る、即時的な小さな報酬を設けるなどが有効です。認知行動療法やソーシャルスキルトレーニング、必要に応じて薬物療法(ADHDの場合)も役立ちます。
まとめると、実行機能の障害、時間・視点取得の難しさ、報酬系の偏りが主な原因で、約束を守れないのは努力不足ではなく神経発達の特性です。理解と適切な支援で大きく改善可能です。気になる場合は児童精神科や発達外来での評価をおすすめします。
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車 重徳
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