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発達障害を抱える人はそうではない人よりも平均寿命が有意に短い理由とは

  • 2025/12/12

発達障害と平均寿命の関係

スウェーデンのカロリンスカ研究所の疫学研究により、発達障害のある人々の平均寿命が一般人口より短いことが明らかになっています。この背景には、生物学的要因、心理社会的要因、医療アクセスの問題など、複数の要因が複雑に関連しています。

精神疾患の併存と自殺リスクの増大

発達障害のある人は、うつ病、不安障害、双極性障害などの精神疾患を併発する割合が非常に高いことが知られています。特に自閉スペクトラム症(ASD)やADHD(注意欠如・多動症)では、一般人口と比較して自殺率が数倍高いことが報告されています。社会的孤立、慢性的なストレス、いじめや差別の経験、就労困難、対人関係での挫折などが積み重なり、深刻な心理的苦痛を生み出します。また、発達障害特有の認知特性により、問題解決が困難になったり、衝動的な行動に至りやすかったりすることも、自殺リスクを高める要因となります。適切なメンタルヘルス支援を受けられない場合、絶望感が深まり、生命に関わる危機的状況に陥る可能性が高まります。

事故や外傷による死亡率の上昇

ADHDのある人は、衝動性、注意の持続困難、危険予測能力の弱さから、交通事故、転落、溺水などの不慮の事故に遭遇するリスクが著しく高いことが複数の研究で示されています。運転中の注意散漫、危険な状況での判断ミス、安全確認の不徹底などが、事故死亡率を押し上げています。また、ASDのある人では、感覚過敏や感覚鈍麻により、身体的危険に適切に反応できない場合があります。痛みや体調変化への気づきの遅れも、重大な結果につながることがあります。

身体疾患の併存と健康管理の困難

発達障害のある人は、てんかん、肥満、2型糖尿病、心血管疾患、消化器疾患などの身体疾患を併発する割合が高いことが報告されています。

生活習慣管理の困難

実行機能(計画立案、時間管理、自己制御)の弱さにより、規則正しい生活リズム、バランスの取れた食事、定期的な運動といった健康的な生活習慣の維持が難しくなります。ADHDでは衝動的な過食や不規則な食生活、ASDでは極端な偏食や特定食品へのこだわりが見られることがあります。

服薬アドヒアランスの低下

慢性疾患の治療には継続的な服薬が必要ですが、ワーキングメモリの弱さ、計画性の問題、時間感覚の困難さなどから、服薬を忘れたり中断したりすることが多くなります。その結果、疾患のコントロールが不十分となり、合併症や重症化のリスクが高まります。

医療機関へのアクセス困難

定期受診の予約管理、症状の言語化、医師とのコミュニケーションなどに困難があり、適切なタイミングで医療を受けられないことがあります。ASDでは、感覚過敏により診察や検査自体が大きなストレスとなり、受診を避ける傾向も見られます。体調不良のサインに気づきにくい、あるいは気づいても適切に対処できないため、疾患の発見や治療が遅れます。

物質使用障害と依存症

発達障害のある人は、不安、抑うつ、社会的孤独感などから逃れるために、アルコールや薬物に依存するリスクが高いことが指摘されています。特にADHDでは、衝動制御の困難さや即時報酬への欲求の強さから、物質使用障害を発症しやすい傾向があります。長期的な物質使用は、肝疾患、心疾患、脳損傷、感染症など、深刻な健康問題を引き起こし、寿命の短縮に直結します。また、過量摂取による急性中毒死のリスクも高まります。

社会経済的要因と健康格差

発達障害により、学業達成、就労継続、収入の安定において困難を抱えることが多く、結果として社会経済的地位が低くなる傾向があります。経済的困窮は、栄養状態の悪化、居住環境の質の低下、適切な医療へのアクセス制限などをもたらし、健康格差を生み出します。また、社会的孤立や支援ネットワークの不足は、危機的状況での助けを得られにくくし、問題の深刻化や慢性化を招きます。

てんかんなどの神経学的合併症

特にASDでは、てんかんの併存率が一般人口の数倍高いことが知られています。てんかんは、発作による事故、突然死(SUDEP: Sudden Unexpected Death in Epilepsy)のリスクがあり、寿命短縮の一因となります。

予防と介入の重要性

これらの問題に対しては、包括的で継続的な支援が不可欠です。・ 早期発見と早期介入・ メンタルヘルスケアの充実と自殺予防対策・ 生活技能訓練(健康管理、服薬管理、金銭管理など)・ 定期的な健康チェックと予防医療の推進・ 就労支援と経済的安定の確保・ 社会的つながりの構築と孤立予防・ 医療機関との連携強化と受診支援

発達障害があっても、適切な理解と支援体制があれば、健康で充実した人生を送ることは十分に可能です。社会全体で包括的な支援を整え、健康格差を解消していくことが求められています。

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発達障害ラボ

車 重徳

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自閉症スペクトラム(ASD)や広汎性発達障害(PDD)、学習障害(LD)やグレーゾーンの子の支援やトレーニングに定評のある発達障害ラボの室長です。 知能検査「WISC-Ⅴ(ウィスク5)」の実施や既存の結果による分析・アドバイスも行っています。 また、近年増えている起立性調節障害やHSC(敏感過ぎる子ども)の対応方法などにも定評があります。