WISC-Ⅴ(ウィスクファイブ)検査の量的推理指標(QRI)とは
- 2025/12/09
WISC-Ⅴ(ウィスクファイブ)検査の量的推理指標(QRI)とは
WISC-Ⅴ(ウィスクファイブ)検査の量的推理指標(QRI: Quantitative Reasoning Index)は、5つの主要指標に加えて算出できる補助指標の一つです。この指標について詳しく説明します。
QRIが測定する能力
量的推理指標(QRI)は、数的な情報や数量的な関係性を理解し、推論する能力を測定します。具体的には、「算数」と「絵の概念」という下位検査の結果から算出されます(ただし、実施セットによって構成が異なる場合があります)。算数課題では、文章で提示された数的問題を、制限時間内に暗算で解きます。絵の概念では、複数の絵の中から共通の特徴を持つものを選び出す課題を通じて、カテゴリー化や概念形成の能力を評価します。これらの課題に共通するのは、「量的・数的な情報を扱い、関係性を見出し、論理的に推論する」という点です。
流動性推理指標(FRI)との違い
WISC-Ⅴ(ウィスクファイブ)の主要指標である流動性推理指標(FRI)は、「行列推理」「重り」「パズル」から算出され、より視覚的・空間的な推理能力を測定します。一方、量的推理指標(QRI)は数量や言語的な概念を扱う推理能力に焦点を当てているため、より「数学的思考」や「言語的推論」に近い能力を反映します。FRIとQRIに大きな差がある場合、視覚的推理と数量的推理で得意・不得意が分かれていることを示唆します。例えば、FRIは高いがQRIが低い場合、図形やパターンの推理は得意でも、数的な問題解決は苦手という特性が考えられます。
QRIから分かる子どもの特性
算数・数学の文章題への対応
QRIが高い子どもは、文章で提示された数学的問題から必要な情報を抽出し、適切な演算を選択して解決することが得意です。「AさんがB個持っていて、C個もらったら全部で何個?」といった問題を、素早く正確に処理できます。逆にQRIが低い場合、計算そのものはできても、文章題になると何を求められているのか分からない、どの計算式を使えばよいか判断できないという困難が生じます。
数量的概念の理解
「多い・少ない」「大きい・小さい」といった量的な比較、「倍」「割合」「比」などの相対的な数量関係の理解に関わります。QRIが低い子どもは、こうした抽象的な数的概念の理解に時間がかかります。
論理的思考と問題解決
数量を手がかりに論理的に考える力を反映します。「もし○○だったら□□になる」という仮説的思考や、複数の条件から結論を導く推論能力とも関連します。
日常生活での実用的な計算
お小遣いの計算、買い物での値段の見積もり、時間の計算など、日常場面での数的問題解決能力とも関連します。QRIが低いと、こうした実生活での数的判断に困難を示すことがあります。
臨床的意義
量的推理指標(QRI)は、学習障害の中でも特に算数障害(ディスカリキュリア)のアセスメントにおいて重要な情報を提供します。計算の手続き的な能力(単純な足し算・引き算)と、数量的推理能力は別の認知機能であり、QRIはその後者を評価します。また、言語理解指標(VCI)は高いのにQRIが低い場合、言葉の理解力はあるが数的推論が苦手という特性が明らかになります。これは支援の方向性を考える上で重要な情報です。逆に、QRIが他の指標より著しく高い場合、数学的・論理的思考が強みであることを示し、STEM(科学・技術・工学・数学)分野への適性を示唆することもあります。
支援への活用
量的推理指標(QRI)が特に低い場合、以下のような支援が有効です。- 文章題では、問題文を図や絵に置き換えて視覚化する
- 「何を求められているか」を明確にし、式を立てる手順を段階的に教える
- 具体物(おはじき、ブロック)を使って数量関係を体験的に理解させる
- 抽象的な概念(割合、比など)は、身近な例を豊富に示して理解を促す
- 計算機の使用を認め、推論のプロセスに集中できるようにする
- 暗算を強要せず、筆算や図示を積極的に活用させる
他の指標との関連
量的推理指標(QRI)は、ワーキングメモリ指標(WMI)や処理速度指標(PSI)とも関連があります。算数課題は暗算で行うため、WMIが低いとQRIも低くなる傾向があります。また、制限時間内に解く必要があるため、PSIの影響も受けます。したがって、QRIが低い場合、それが純粋に数量的推理の弱さなのか、ワーキングメモリや処理速度の影響なのかを、他の指標と合わせて慎重に検討する必要があります。
まとめ
QRI(量的推理指標)は、「数量的な情報を扱い、論理的に推論する能力」を測定する補助指標です。算数・数学の文章題や、日常生活での数的問題解決に直結する能力を反映します。この指標により、計算技能と数学的推論を区別して評価でき、より効果的な学習支援を計画することが可能になります。
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発達障害ラボ
車 重徳

