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WISC-Ⅴ(ウィスクファイブ)検査の聴覚ワーキングメモリ指標(AWMI)とは

  • 2025/12/08

WISC-Ⅴ(ウィスクファイブ)検査の聴覚ワーキングメモリ指標(AWMI)とは

WISC-Ⅴ(ウィスクファイブ)検査の聴覚ワーキングメモリ指標(AWMI: Auditory Working Memory Index)は、5つの主要指標に加えて算出できる補助指標の一つです。この指標について詳しく説明します。

AWMIが測定する能力

聴覚ワーキングメモリ指標(AWMI)は、耳から入ってくる情報を一時的に保持し、それを頭の中で操作・処理する能力を測定します。具体的には、「数唱」と「語音整列」という下位検査の結果から算出されます。数唱では、検査者が読み上げた数字の列を、そのまま復唱したり(順唱)、逆から言ったり(逆唱)、小さい順に並べ替えたり(配列)します。語音整列では、動物と数字が混在した系列を聞いて、動物は登場した順に、数字は小さい順に答えます。これらの課題に共通するのは、「聴覚的に提示された情報を、短時間保持しながら、何らかの処理を加える」という点です。

通常のワーキングメモリ指標(WMI)との違い

WISC-Ⅴ(ウィスクファイブ)検査の主要指標であるワーキングメモリ指標(WMI)は、「数唱」と「絵のスパン」から算出されます。絵のスパンは視覚的な刺激を用いるため、WMIは聴覚と視覚の両方のワーキングメモリを含んでいます。一方、AWMIは純粋に聴覚情報のみを扱う課題で構成されているため、より「聞いて覚えて処理する」能力に特化した指標となります。もしWMIとAWMIに大きな差がある場合、それは聴覚と視覚でワーキングメモリの能力に違いがあることを示唆します。例えば、AWMIがWMIより著しく低ければ、聴覚的な情報処理に特異的な困難があると考えられます。

AWMIから分かる子どもの特性

授業での聞き取り能力

AWMIが低い子どもは、教師の口頭説明を聞いて理解し、覚えておくことに困難を抱えます。「教科書の○ページを開いて、問題1から3をノートに書いて、終わったら隣の人と確認してください」といった複数ステップの指示を、聞いただけでは覚えきれません。

暗算の困難

計算を頭の中で行う際、数字を聴覚的に保持しながら操作する必要がありますが、AWMIが低いとこれが困難です。筆算にすれば解けるのに、暗算になると途端にできなくなるという特徴が見られます。

会話の記憶

電話での伝言、友達からの複数の用件、保護者からの指示などを覚えておくことが苦手です。「さっき言ったよね」と指摘されても、内容を保持できていないことがあります。

音韻処理との関連

AWMIは、言葉の音韻(音の構造)を一時的に保持する能力とも関連しています。そのため、AWMIが低い子どもは、読み書きの習得、特に音読や書き取りにも困難を示すことがあります。

臨床的意義

AWMIは、学習障害、特に読字障害(ディスレクシア)のアセスメントにおいて重要な情報を提供します。音韻ループ(言葉を音として一時的に保持する脳の仕組み)の機能を反映するため、読み書きの困難との関連を検討する際に有用です。また、注意欠如・多動症(ADHD)の子どもでは、聴覚的な注意の持続や情報の保持に困難があることが多く、AWMIが低くなる傾向があります。

支援への活用

AWMIが特に低い場合、以下のような支援が有効です。- 口頭指示だけでなく、視覚的な情報(板書、プリント、絵カード)を併用する

- 指示は短く、一つずつ区切って伝える

- 重要な情報はメモを取らせる、または書いて渡す

- 暗算ではなく、筆算や図を使った計算方法を認める

- 静かな環境で聞く機会を増やし、聴覚的な注意を向けやすくする

まとめ

AWMI(聴覚ワーキングメモリ指標)は、「耳から入る情報を、一時的に保持しながら処理する能力」を測定する補助指標です。この指標により、子どもの認知特性をより細かく理解し、聴覚情報処理の弱さに特化した支援を提供することが可能になります。主要指標だけでは見えてこない、子どもの困難の背景を明らかにする重要な情報源となります。

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発達障害ラボ

車 重徳

自閉症スペクトラム(ASD)や広汎性発達障害(PDD)、学習障害(LD)やグレーゾーンの子の支援やトレーニングに定評のある発達障害ラボの室長です。 知能検査「WISC-Ⅴ(ウィスク5)」の実施や既存の結果による分析・アドバイスも行っています。 また、近年増えている起立性調節障害やHSC(敏感過ぎる子ども)の対応方法などにも定評があります。