処理中です...

大人が変われば、子供も変わる

  • 2024/11/25

琥珀ちゃんの学びと動物行動学の応用

我が家には琥珀ちゃんという保護犬がいます。行動学には「動物行動学」という分野があることをご存じでしょうか? 多くの人は、動物行動学を愛玩動物や野生動物の行動を研究する学問と考えるかもしれませんが、実際には、この学問は人間の行動にも適用できると言えるでしょう。

なぜこのようなお話をするかというと、琥珀ちゃんは「噛み癖がある」「攻撃的」という理由で飼育を断念された背景があり、6か月の子犬の時に我が家にやってきました。以前の飼い主との関わりは詳細には分かりませんが、どうやら子犬の重要な社会化期に十分な経験を得られず、警戒心や攻撃的な行動が強まったまま成長してしまったようです。その結果、他者との適切な関わりを学ぶ機会が不足していた可能性があります。

琥珀ちゃんが我が家に来て3年半が経過しましたが、いまだにその影響は見られます。現在では「私を守りたい」という意識から行動しているようです。このような行動は、行動分析とその変容を目指す行動学に基づいたアプローチ、つまり認知行動療法を通じて改善の可能性があります。実はこの手法は、子どもが他者との関わり方を学ぶ際にも非常に有効です。

私たちが日常でよく耳にするのが「子どもが○○だから」という言葉です。例えば、「うちの子は怖がりだから」とか「人見知りだから」といった表現です。これらの特性は、親や周囲の大人が子どもの行動を説明するために使う言葉ですが、動物行動学や行動分析の視点から見ると、その「特性」は固定されたものではありません。環境や経験、学びによって大きく変わる可能性を秘めています。

琥珀ちゃんの場合も、「攻撃的」「警戒心が強い」といったラベルを貼るのは簡単ですが、それは過去の経験や状況に基づく行動の表れに過ぎません。人間の子どもについても、ある行動や反応を単に「その子の性格」と決めつけるのではなく、「なぜそのような行動が見られるのか」「その背景にはどんな要因があるのか」を考えることが重要です。

特に、子どもが他者との関わり方を学ぶ際には、小さな成功体験や安心感を積み重ねることが大切です。琥珀ちゃんのケースでは、少しずつ信頼関係を築きながら、安心できる環境の中で適切な行動を引き出す練習を続けました。これは、子どもが他者との関わり方を学ぶプロセスにも通じます。

例えば、「うちの子は友達と遊ぶのが苦手」と感じる場面では、無理に友達と遊ばせようとするのではなく、まずは一人で遊ぶ中で楽しさや安心感を感じられる場面を用意します。その後、他者とのやり取りの中でその安心感を少しずつ広げていくことができます。このようなアプローチは、動物行動学や認知行動療法の考え方を応用したものです。

動物も人間も、経験や環境次第で変わる可能性を持っています。その変容の鍵となるのは、私たちの理解と働きかけなのかもしれません。

音楽療法士・保育士として、音楽を通じた療育支援に取り組んでいます。「言葉を話すのが難しい」「他者との関わりが苦手」など、子どもたちへのお悩みに寄り添い、音楽療法を活用したアプローチをご提案しながら、解決策を一緒に考えていきます。子どもたちの「心」を育むお手伝いをしています。